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最高裁判所第二小法廷 昭和28年(オ)686号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人久保田美英、同安田清治郎の上告理由について。

記録によると、昭和二七年一〇月一四日言い渡された第一審判決は、同年一一月一日上告人(被告)代理人安田清治郎に、同月五日近畿無尽株式会社(共同被告)代理人久保田美英にそれぞれ送達され、同月一九日、すなわち右会社としては法定期間内に、上告人としては期間経過後に、上告人及び右会社連名の控訴状により控訴が提起されたことが明らかである。ところで論旨第二点は、本訴は必要的共同訴訟であるから、右会社の控訴提起は共同訴訟人の一人たる上告人に対しても適法に控訴提起の効力を生じているというのであるが、上告人に対する本訴請求は、被上告人から上告人に本件不動産を売渡した事実のないことを原因として上告人に対する売買による所有権移転登記の抹消を請求するものであり、右会社に対する訴は、右不動産につき上告人と右会社との間になされた抵当権設定契約及び代物弁済契約が無権利者の処分行為で無効であるとの趣意のもとに、右契約による抵当権設定登記及び請求権保全仮登記の各抹消を請求するものであつて、その原因及び請求は各独立し、その間「訴訟ノ目的ガ共同訴訟人ノ全員ニ付合一ニノミ確定スベキ場合」でないから、いわゆる必要的共同訴訟に属しないことは明らかである。それ故、上告人の控訴を控訴期間経過後になされた不適法な控訴であるとした原判決の判断は不当でなく、論旨第二点は理由がない。又、論旨第一点前段の事実については、原判決は、その事実を否定して追完の許すべからざることを判示しており、後段の主張についても、おのづからこれに該当しない旨判断をしているのであるから、所論の違法はない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)

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